大東亜戦争と朝日新聞 その2

昭和21年3月6日に憲法草案が発表されるとその翌日の社説で、米国人の憲法観では、「国民の憲法」「国民の権利」であるところを、強引に「人民」の総意と言い換えている。

「画期的な平和憲法

 狡知に長けた朝日新聞主筆は、米国および日本政府の資本主義連合が中国、ソ連、共産化した朝鮮と対立した場合にソ連にとって脅威にならないように、武力放棄の憲法をほめあげてみせる。

ソ連は本国を離れて朝鮮、中国に強い影響力を行使しており、日本兵シベリアに連行していた。すでに資本主義米国、蒋介石中国、中国共産党ソ連の対立の予感は当然あったにちがいない。

 「政府原案の最も重要な特徴は、日本の主権が人民にあることを認め、且つこの人民の総意に基づく天皇制を認めたことであろう」

 

 

 これは国民と言えば在日朝鮮人をのぞくことになるから、用意周到に米国式の「国民」を「人民」と言い換え、人民」が認めた「天皇制」は「人民」が「廃棄すると意思するならば」「制度」なのだから、廃棄できるのだという意味である。

 

 以後、進歩史観に立つ法曹人は営々として、皇室廃絶に向けて女系天皇容認など工夫を凝らすことになる。

 

 「人類の平和を至高の念願とする、平和的国民の心情を厳粛に世界に対して表現したものといえよう」と「戦争の悲惨な体験によってこりごりした日本国民読者を引き付けておいてから、そんな大切な「平和」は、ソ連方式がいいのだと国民を誘導するのである。

 

 「(平和の実現には、)経済恐慌のない世界、失業のない世界、生産力の無限の向上が社会の無限の向上に全く矛盾なしに照応する世界が必要」

 「この問題はソ連以外の国々において特に重大な意義を持つ。ソ連はすでにソ連方式によりこれを解決しているからである。」

 

 こうなれば、朝日新聞とほぼ基本的に同じ考えを共有する岩波文化人、進歩的文化人の進歩とは、ソ連を進歩の最先端とみなすという進歩的文化人なのだから、米英との単独講和を否定して、進歩の最先端たるソ連との講和を含む全面講和を主張してやまなかったのは、当然のことなのであった。

 

 そして、その後、ソ連中国共産党北朝鮮を、それぞれその非道、破綻が誰の目にも明らかになるその限度まで、日本の進歩主義学者、文学者、労働組合幹部たちは、擁護し続けていったのである。

 

 米国を中心とするGHQの占領政策は、戦前戦中日本の米国が見た「軍人偏重日本の解体」が基本政策であり、トルーマン政権の対ソ警戒意識が強まるにつれて、日本小国化意図は希少化していく。また、占領の年を追うごとに憲法は、米国にとって占領時限立法で、講和条約後は、ドイツのその後と同様、当然主権国家としての日本が修正していくことは、米国自身がその憲法を幾度も修正していることからもあまりにも当然なことであった。

 

 GHQ占領中からすでに米国の思惑を超えて(ソ連中国共産党を最先端とする)進歩史観に立つ日本の知識人、新聞メディアは、米国の「太平洋戦争史観」の国民への新聞、ラジオ、映画による普及を利用して、戦争を起こしたのは、あくまでも、日本ナショナリズム軍国主義、侵略思想だというように国民に思わせることによって、彼ら戦前共産主義者日本共産党とは別動の共産主義者)の敗戦革命企図を完全に隠蔽した。

 そして、日米安保条約という再軍備を唱える日本の保守政権と米国は戦争勢力、中国共産党北朝鮮は被害者としての平和勢力だと宣伝したのである。

 それは、日本の経済成長の果実をなんとかして、北朝鮮、中国に貢がせて、社会主義国家を米国に負けない国造りに向かわせる70年以上におよぶ必死の工作だった。

 

この進歩主義史観の弟子たちが、NHK、朝日、毎日に入り込んで流しつづけた日本兵の残虐行為の証明報道は、自虐史観と名づけられ、やがて米国が日本を弱体化するために仕組んだものと、江藤淳によって主張され、これが桜井よし子に引き継がれた。

 だが、本当は日本軍の非道、日本兵の不道徳性を米国があげつらったわけではなく、日本軍の非道、残虐、不道徳性をあげつらうことに戦略的に重点を置いたのは、中国国民党中華主義中国共産党、韓国小中華民族主義、日本共産党、旧社会党の「反動に随伴する民族の残虐性」論理である。

 米国が日本人に急速の理解させようと急いだのは、政府への盲従をやめること、権力分立、言論出版の自由を講和条約後に定着させることであり、9条条項は、周辺諸国の脅威を日本が認識するという政治情勢の変化は自明である以上、占領期間終了後は日本の主権下で修正されることはあまりに当然のことだったのである。

 9条を資本主義米国と資本主義日本の資本主義連合に対する反資本主義連合の結束のてことして利用するには、世界情勢に疎い日本国民大衆の「戦争の悲惨は二度とごめんだ」という意識あるゆえに、もっとも魔術的効果を果たして、9条を固定化し、中国、北朝鮮の脅威に不安を覚えた日本は、中国、北朝鮮、韓国に軍事的対抗を断念して、常に巨額の経済援助と技術援助を提供することをもってして、近隣国からの攻撃を緩和するしかなかったのである。

 これは、米国にとっては、日米両資本主義国間の競争という点ではある程度都合がよく、(社会主義が進歩の先端)進歩主義者にとって、中国、北朝鮮、韓国という後進国が資本主義の先頭ランナーの一国である日本に負けない発展を示すかもしれないという夢を追いかけ続けるのに都合のよい事態だった。

 9条はなによりも、日本を丸腰の不安にさせ、不安を解消させるためにロシア、中国、北朝鮮、韓国に富を移転させる絶大な効果を持ち続けているのである。

 

 憲法9条と日本残虐行為告発の果たす政治的機能

  • 後進資本主義国韓国に対して、罪障感によって、技術供与、経済援助が推進されて、世界最先進資本主義国の発展が阻害されて、元来「資本主義がいいものであるはずがない、必ずいずれ崩壊する矛盾に満ちた非人間的な制度」だと確信するものには、心情的に気分のいい結果が持続する。
  • 後進資本主義、なおかつ軍事的に強大なロシアに対して日本は9条によって国防が手薄にならざるを得ず、抑止による平和が望めず、不安に駆られて経済援助をせざるをえない。これは、日本の社会福祉、インフラ整備、次世代への教育費拡充予算をロシア援助に回すことになり、財政破綻と日本資本主義破綻の推進要因になる。
  • 同じように、半資本主義半社会主義の中国に対しても、ロシアに感じると同様の不安を感じて、軍事抑止が不可能な代わりに常に経済供与で攻撃的態度に出かねない中国をなだめ続けるしかない。

これまた、日本の財政破綻の要因になり、日本資本主義、世界資本主義システムの崩壊の要因にはなっても、資本主義の持続要因にはならない。

  • 特に、中国、北朝鮮、には罪障意識の強調によって、軍事的不安とダブルで日本の富を中国、北朝鮮に移転することができる。
  • 日本の不安は、時に日本自身が軍事整備を9条に阻まれてできない代わりに韓国に対北朝鮮軍事抑止を肩代わりさせる必要にせまられて、韓国にとって棚からぼたもち式に延々と日本から技術供与、外交的譲歩がなされる。
  • こうして、後進資本国のキャッチアップと共産主義国の日本からの貢ぎ資本による持続成長の中で、日本資本主義が資本主義特有の崩壊に至ることを夢想し、半永久に資本主義国家群の倒壊を待ち続けるのが、アナーキストポストモダンの反資本主義思想。
  • 日本の保守政権としては、9条に手をつけることは、日本の一般大衆にとって、「二度と戦争はごめんだ。戦争を回避するには、憲法9条維持がまずもって最大の効果を発揮する」という共産党社会党、および文化人のプロパガンダが深く浸透しているために、日本人にとってもっとも大事ななにごともなく、安定した世の中が続けばいいという願望を破壊する政権というイメージを持たれて、選挙で大敗北する恐怖があり、到底、手をつけられない。

 

したがって憲法9条は、次のようないくつかのタイプの知識人によって支えられているといってよいだろう。

  • 日本自身の武力放棄が他国の攻撃性を和らげて、武力侵攻を思いとどまらせると本気で信じ込んでいる非常に純真無垢な世間知らずでそれでいて弁護士、医師などになるような知識人である人。あるいは国民に影響力を持つ芸術家、俳優、小説家、音楽家、映画監督、芸能人など。
  • 続く

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