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姜尚中の思想

 姜尚中は2015年10月13日の「プレジデントオンラインスペシャル」のインタビューで、「個人的なことで言えば、60歳半ばにして初めて、わたしは「悪人というものは、実際に存在するのだ」と思い知る経験をした。と語っている。

 極めておかしな考えである。
 人は自分が悪人の被害者にならずとも、「世の中には悪人が存在すること」は犯罪報道を見て、知っているはずである。ところが、姜尚中は、60歳半ばにして、「悪人というものは、実際に存在するのだ」と思い知ったのだ、という。
 おかしいではないか、姜尚中は殺されたのではない以上、どんな悪人と会ったか知らないが、犯罪報道の加害者よりもひどい悪人とは、どんな悪人なのか、ぜひとも、聞かせてほしいものだ。

 集英社新書「日朝関係の克服」の中で、次のように書いている。(24ページ)
 「日本に帰還した拉致被害者北朝鮮に残るその家族の境遇は、まさしく在日韓国・朝鮮人のそれを彷彿させる。」と。

 在日韓国・朝鮮人一世は、姜尚中の認識では、日本に「拉致された」と同等という価値判断が姜尚中にはあることになる。

 しかしそうだろうか。
 日本の「拉致被害者」とは、「誘拐の被害者」なのである。
 これに対して、在日韓国・朝鮮人一世は、貧困からの移民者たちである。まったく、それは「刑法犯罪の被害者」なんかではない。にもかかわらず、姜尚中は、現代の日本人拉致被害者と在日韓国・朝鮮人の立場が同じだと言う。

 姜尚中朝鮮戦争を「内戦」と言っているが、「内戦」ではない。
 大韓民国朝鮮民主主義人民共和国の国家間戦争である。
 
 歴史的な記憶の破壊を進める社会的な仕組みが他のどの国よりも発達している日本、と姜尚中は言っている。
 ちなみに、この「他のどの国よりも」と言う表現は、在日であるなしを問わず、韓国人に普遍的にみられる表現である。
 2001年8月15日金大中発言「世界に類例のない、偉大な光復闘争の歴史」
 在日韓国人作家の麗羅氏の「体験的朝鮮論」24ページ「(李氏朝鮮王朝)後期の歴史の特徴は、<世界のどの国の歴史にも例を見ない>熾烈な党争。

 こんなふうに、韓国人は「他に例を見ない残虐な帝国主義」とか「他に例のない植民地主義」という表現をしょっちゅう使う、恥ずかしげもなく、おおげさである。

 姜尚中は「北朝鮮人と韓国人は果たして同じ民族なのか」と、愚問を発している。
 アングロサクソンがイギリスにも、アメリカにもいるが、明らかに国籍がちがうし、国民性も違うというのとほぼ同じく、北朝鮮と韓国は同一民族であろう。

 それはともかく、姜尚中は同書35ページに「ソ連軍は、朝鮮では共産主義者の力が強いことを発見し、それをよりどころとして、朝鮮人側に行政をまかせていったのである。明らかに米国の軍政支配とは対照的であった」と、ソ連を絶賛している。

 これは姜尚中の論理破綻を示している。姜尚中は33ページで「敗戦が8月15日まで延びたために、朝鮮の分割占領が起きた」と言っている。つまり、ソ連の参戦前に降伏していればよかった、というのだ。しかし、仮に日本が早期降伏していても、朝鮮に「共産主義者が優勢だった事実」は、姜尚中自身が認めている。
 ならば、米国の単独占領下の朝鮮は米国の嫌う共産主義者優勢の朝鮮だったのだから、その時、米国は是が非でも、朝鮮を四カ国または、国連信託統治扱いにして、独立を許さなかったろう。

 米国もソ連も、なぜ北と南に独立国家を支援したかといえば、相互に、相手側の陣営の国家が成立するならば、とりあえず、自陣営に属する国家を独立させてしまえという判断がわいたのだから、当時の朝鮮は、統一がなれば、独立はならず、独立がなれば、統一はならない状況だった。それは、アメリカという最強国家の理念に沿わない「共産主義者優勢の民族」だったからであり、彼等朝鮮民族が「自由主義者優勢の民族」であったなら、独立も得られ、分断も起きなかった。

 要するに、アメリカは、ぐずぐずしていると、北に共産主義国家が生まれてしまうと予測して、先手をうって、信託統治を断念して、8月15日に南側だけでも、反共国家を独立させた。そして、すぐさま、9月9日に共産主義者の国家が独立したというわけだ。
 この分断を日本のせいにするのは、姜尚中共産主義に統一されてもろくなことにならないから、韓国だけでも、西側陣営に残って良かった、という思いがまったくない事を意味する。つまり、姜尚中は、韓国が西側陣営だったからこそ、日本の金銭支援を受ける事が可能になり、日本の技術援助、金銭支援があったからこそ、こんにちの韓国の準先進国入りが可能だったという洞察がまったくないのである。

 社会主義統一国家の朝鮮に未来があると姜尚中は思い込んでいるのだ。
 仮に統一国家にして共産主義の朝鮮国家があったならば、今頃朝鮮半島には、中国よりももっとひどく、現実の北朝鮮と似たりよったりの馬鹿げた国が存在したろう。

 日本の降伏の時期が問題だったのではなく、問題は、朝鮮民族に「共産主義者が優勢であったこと」が、「統一あれば独立なく、独立あれば、統一なし」という状況を生んだのである。

 36ページに姜尚中は、明確に、決定的に書いている。
 「さまざまな形で北朝鮮という国家そのものの正統性を否定する俗説があるが、成立の歴史的な経緯をみれば、そのような俗説は誤りである。」と。

 これはおもしろい。ならば、姜尚中は、韓国も北朝鮮もともに、「国家の正統性」がある、と言っているか、北朝鮮だけが「正統性」がある、と言っているかのどちらかである事になる。前者ならば、朝鮮戦争は「内戦」ではなく、後者ならば、姜尚中は、明確に「北朝鮮」こそ、朝鮮民族の唯一無二の「正統国家」だと言っていることになる。

 だいいち、国家とは正統性が問われるのではなく、国家であるかどうかが肝心なのである。そういう意味では、北朝鮮も韓国も、まぎれもない国家だろう。

 41ページで姜尚中は、「日本がドイツのように分割されてもおかしくなかったはずだ」と、無知をさらけだしている。
 ドイツがなぜ分割されたかというと、ドイツの主要な交戦国は、ソ連であり、けっしてアメリカではなかったことに姜尚中は気づかない。連合国のドイツ分割占領は、姜尚中の言う「ナチズム復活阻止」が理由ではない。ソ連がドイツを敗北せしめたゆえに、ドイツの占領を強く主張できたからで、逆に、ソ連は日本に対しては、火事場泥棒的に参戦しただけだったから、強国アメリカに強いて北海道の占領を主張できなかったのだから、日本非分割は必然だったと言っていい。

 米国がソ連の北海道占領を拒否したのは、当たり前である。ソ連は、それこそ、対日参戦が遅すぎたのだ。

 姜尚中は「敗戦国と解放国の明暗は逆転することになった」というが、もともと、敗戦国と比べられるのは、勝戦国であって、「敗戦国と勝戦国の明暗は逆転した」というなら、ありうる。

 たとえば、英国は勝戦国だが、現在のドイツのほうが国力は上だろう。
 なぜ、敗戦国と解放国というのが、「明暗の逆転」が成り立たないかというと、精一杯戦った敗戦国と、精一杯独立をしようと戦おうとはしなかった解放国とは比べるようなものではないからだ。
 また、被害者性を言い立てる朝鮮、韓国とちがって、被害者性を言い立てない後進国で独立を勝ち取った国は世界に多い。

 姜尚中は、朝鮮戦争について、朝鮮総連並みの馬鹿げた論理を主張している。
 「北朝鮮は(すでに多くの死傷者の発生していた交戦状態を)全面戦争に持ち込むことになる」と「北朝鮮の侵略性」という表現を避ける。

 李承晩は後退しても、平静であり、その理由は、米軍とともに、北進統一を成し遂げる事ができるからだ、と姜尚中は言う。

 だが、まぎれもない事実は、北が釜山まで先に迫った事、そして、姜尚中自身言っているとおり、アメリカ政府がマッカーサーに地上軍派遣を許可したことが、金日成にとって予想外だったと言うなら、金日成は韓国国内の「自由主義者の意思」を武力によって蹂躙したし、先に武力蹂躙したことは間違いないということに、姜尚中は鈍感なのである。

 それはまちがいなく、共産主義統一であるにもかかわらず、姜尚中は、「朝鮮戦争は武力によるものであったが、それ自体は民族統一を標榜したものであった。」と書いて、それが、一党独裁を拒絶する者の意思を蹂躙する統一であることには、まったく言及しない。

 姜尚中は同署56ページで、「朝鮮戦争の過程で、日本ではかつての植民地であった韓国・北朝鮮や、朝鮮民族に対して同情心が向けられることがなかった」と書くが、
興味深いことに、姜尚中は、日本人が朝鮮の「共産主義者」韓国の軍事クーデター政権の追認にどう思ったかは一言の触れず、ただ「民族への同情」だけを強調して、「自由主義」「クーデター権力追認」「一党独裁嫌悪」について言及しない。